長谷寺ではホームページを開設し、日々皆様からのご質問やお問い合わせにメールでお答えしていますが、2月某日このようなメールをいただきました。
『去年3月末、ご縁があって30数年振りに長谷寺にお参りいたしました。
早朝の勤行で本尊十一面観音様の御前(みまえ)の帳(とばり)が下げられていくのを厳粛な気持ちで拝見し、その後観音様のお御足(みあし)に触れて、本当に心が洗われる思いでした。その時、「源氏物語」の玉鬘(たまかずら)のエピソードを思い出し、我が家の二人の娘の良縁をお願いいたしました。
そのせいでしょうか、5月に下の娘の縁談が整いました。その準備であれこれしているうちに、9月、東京にいる上の娘が「結婚するかもしれない人がいるから泊まりがけで実家に連れて行ってもいい?」とのLINE(ライン、スマートフォンの連絡機能)があり、大喜びで帰省日の10月某日の迎える準備をしました。
ところが、10月に入り「ごめん、行けなくなった」とLINE、驚いて「延期になったの?関係は維持するの?」と尋ねたところ、「だめだと思う…」と涙にくれる鳥のスタンプ(LINEで使用できるイラスト画像)とともに返信があり、私は胸がつぶれる思いでした。
不器用で、そこまで付き合った方もいなかった娘が、やっと結婚するかもしれない、というところまで行って関係が壊れるなんてどんなに悲しいことだろうと、気の毒で気の毒でいてもたってもおられず、娘が帰省する予定の日に、思い切って再び長谷寺の観音様にお参りいたしました。その日はご祈祷(きとう)もしていただいて、ただただ涙にくれ、観音様に「このご縁はともかく、娘にふさわしいご縁を授けてくださいませ」とひたすらお願いいたしました。
その帰路、京都から新幹線に乗り、やれやれと座席に着いた時、上の娘からLINEが来ました。「やはり、ご挨拶に伺うと彼がいっているので実家に行きます。いつが良いですか」と。
正直「観音様、仕事早っ!」と魂消(たまげ)ました。まるで「今昔物語」のようです。
お陰様で、下の娘は3月に上の娘も4月に結婚を予定しております。春になれば、観音様にお礼を申し上げにお参りしなくてはなるまいと考えています。』
という内容でした。
普段参拝の方々と接していましたが、久しぶりに聞いた観音様の霊験譚(れいげんたん、観音様の不思議なご利益や奇跡の話)だなと、そして縁談が纏(まと)まって本当に良かったと、長谷寺で奉職(ほうしょく)している皆で喜んでおりました。
春になり4月も半ばを過ぎた頃、結婚式の日にちも過ぎたにもかかわらず、連絡がなかったので、いささか心配になりました。何気なく周りのものと「そういえば結婚の件の連絡がないね。」という話をしていると、問い合わせ用のパソコンにメールの着信通知が来ました。
『3月某日に次女、4月某日に長女の結婚式を無事に終え、先日夫婦で観音様にお礼のお参りをさせていただきました。』
とのメールの内容に、正直「観音様、仕事早っ!」と魂消ました。
「縁(えん)は奇(き)なり」と申します。人の努力でどうにもならない部分に観音様はご霊験をお示しになります。この話はその典型と言え、観音様の慈悲深さとご霊験の強さを再認識した一件でありました。
※このお話は、メールの送り主の許可を頂いて掲載しています。
※観音さまのご霊験の話は随時受付しております。